罪作りな彼は求愛方法を間違えている
「これぐらい自分で払うよ」
「甘えてろ」
高橋さんは、『前で待ってる』とコンビニを出て行った為、私はお言葉に甘えることにした。
「おまたせ…沢山買ってくれてありがとう。これお釣り」
「もらっておけばいいのに…」
返そうとするお釣りを見せると、彼はふっと笑う。
「自分のお金じゃないんだから、普通はお釣りを返すものじゃないの?」
「買ってもらって当たり前だと思わないんだな」
一体、どんな女性と付き合ってきたんだとジト目で見つめた。
「…そう言うところなんだよな」
「なにが?」
聞いても彼はニコニコと笑うだけで答えてくれない。
「なんでもない。ほら!」
彼は私の手にある買い物袋を取ると、当たり前のようにまた手を繋いできた。
彼氏のようなそぶりに、こちらは恥ずかしいやら切ないやらで居たたまれず、黙ってしまう。
手を繋ぐのはどうして?という思いに、勘違いするなと心の声が答える。
「なぁ…」
「…な、なに?」
「今、そら以外の彼氏なんていないよな?」
学生の時に付き合った人は何人かいたけど、社会人になってからは、素敵だなぁと思う人さえいなかった私が、今、高橋さんに片思いし続けている。