罪作りな彼は求愛方法を間違えている
「いないから、金曜の夜はコウ兄のお店に1人で飲んでたんですけど…誰かいい人がいたら紹介してくれますか?」
人の気も知らないでと、つい、心にも思っていない事を口走っていた。
「お前、この状況でそれを言うのか?」
立ち止まった高橋さんが、冷ややかな目を向けてくるが、思わせぶりに手を繋ぐだけで、ほしい言葉もくれない人に言われたくないと言い返した。
「高橋さんが彼氏になってくれるって言うんですか?」
「なんとも思ってない女と手なんて繋ぐかよ。分かれよ」
彼の切なく掠れた声と、くもった表情に私は動揺しだす。
「わ、わからないわよ」
思わせぶりなセリフと態度だけでは踏み出せないのは、彼の心の中に忘れられない彼女がいる気がするからだ。
「はぁー、ほんと手のかかる女」
「わるかったわね。そんな女と一緒に飲んでも面倒でしょ?私はこのまま1人で帰るから、自分の家に帰ったらどうですか?」
カチンときて、繋いでいた手を振り払い歩き出した私の背後を、苦笑しながらついてくる高橋さんに、余計腹がたつ。
「千花」
「何よ?」
腕を取られ、彼の方に振り向かされた。
「お前を甘やかすって決めた」
その時の彼の艶めく目から目が離せなかった。