罪作りな彼は求愛方法を間違えている
くんくんと嗅いだ後、そらくんは興味なさそうにソファから降り、床に腰を下ろして座っていた私の膝の上に乗ると、甘えるように顔を擦り付けてきた。
今までにないそらくんの仕草に、きゅんきゅんとした私は、思わず頬ずりして抱きしめいた。
普段のそらくんなら、私がそんな事をしようものならすぐに逃げ出すのに、今日の彼は違う。
逃げる事もせず、ぺろぺろと頬を舐めてくれる。
一瞬でも、もう、死んでもいいって思うぐらいの幸せに、頬が緩んでいる私と反対に、高橋さんは不機嫌顔でいる。
「おい、そら、お前そんな態度でいいのか?これは俺がお金を出して買ったんだぞ。その意味わかるか?んっ⁈」
30を過ぎた大人が、動物相手に大人げないと苦笑している私に向かって『なんだよ…』と口だけを動かした彼は、おやつ袋の封を切ってキャンディー状の一口サイズの肉の塊の包みを解いた後、手のひらの上で広げて見せた。
「ほら、食べたいだろ?………食べたいよな⁈」
ペロリと口の周りを舐めるそらくんを見た高橋さんは、ニヤリと笑うと手招きをし始める。
そして彼の思惑通り、そらくんが近寄って行くと、おやつを手の中に握り、そらくんをジッと見つめていた。