罪作りな彼は求愛方法を間違えている
「もう、そんなに焦らしたら可愛そうよ…」
なかなかあげない高橋さんの指先から摘んでいたおやつを取ろうとしたら指先同士が少し触れてしまった。
思わぬ事に、ドキッとして動きが止まったのは、向こうも同じだったみたいで、お互い見つめ合っていた私達。
一瞬の隙を突いたそらくんに、あっという間におやつを取られ、彼の口の中に…
「…あっ、そらくん『そら』」
ミャーとご機嫌な声をあげたそらくんは、腕の中からスルリと抜け出して、いつもの定位置のソファの上にあるクッションの上にいき、寝る体勢を整えだす。
向き合う高橋さんと私の間には何もなく、微妙な距離が残されてしまい、突然、心臓がドキドキとうるさく鳴り出して、音が彼にも聞こえるんじゃないかと焦った私は、テーブルの上に広げられた品を順番に乱雑に触り音を立てながら、いつも以上に声を張り上げてしまう。
「えっと、これと…これは、温めないといけないんだよね。エイヒレは温めるんだっけ⁈…高橋さんビールだよね…先に飲んでる?」
彼に渡そうとした缶ビールに手がぶつかり、ガンと大きな音をたてて倒れゴロゴロと転がりだす。
慌てて取ろうとしてテーブルの上から前のめりになるが、手が届かなかった。