罪作りな彼は求愛方法を間違えている
あっ、落ちる…と思った。
テーブルから落ちる寸前で、高橋さんがキャッチしてホッとする。
「なに慌ててるんだ?」
「あ、ありがとう…慌ててないし、ただ、取ろうとしてぶつかっただけだし」
缶ビールをテーブルの上に元に戻しながら『これ、しばらく飲めないな」とぼやく高橋さんに挙動不審な私は口を尖らせ拗ねていた。
その尖らせた口に、温かなものが触れて離れる際、チュッと音をたてた。その後、頭部を撫でた大きな手を首を左右に振り、振り払らおうをしたが
逆に両手で顔を捕まえられてしまう。
「…ふっ、真っ赤…」
「……」
先程の微妙な近い距離から更に近づいていて、高橋さんの顔は目の前にあるし、キスされたんだと思うとドキドキして声も出ない。
「ちーか…」
顔の動きをふさがれて、甘さを含んだ声で名前を呼ばれると、なぜかドキドキと速く鳴る心臓と同じくらいの速さで何度も瞬きを繰り返し彼を見ているしかできない。
「キスしていい?」
「…い、今さっきキ、キ…スしてきたよね」
なんとか絞り出して答えたが、動揺は隠せないでいる。
「んっ、あれは触れただけで、気持ちがなくても誰とでもできる」
「…サイテー。誰ともでもするんだ」