罪作りな彼は求愛方法を間違えている
自分で言っていて悲しくなる。
「後はわ、わたしと居たいからですよね⁈」
最後は冗談まじりにわざとらしく笑顔を作れば、彼の顔から険しかった眉間がなくなり、片方だけ口角を上げていた。
「よくわかっているじゃないか」
予想外の返答に、耳まで真っ赤になっているのがわかる。
あー、またやられた。
彼の言葉や仕草に振り回されないように気を張っていても、つい油断して、時たま表情に出てしまい、こうして悔しい思いをさせられる。
そして、こちらの精一杯の意思表示も、彼にはちっとも届いていなくて、余計なことを言う度に言わなきゃ良かったと後悔する。
「お前って揶揄いがあるんだよな」
彼の余計な一言でムッとした私と反対に、何故だか彼はご機嫌になっていた。
そして、トドメとばかりに
「お前って、昔一緒に住んでた凛にそっくりなんだよな」
私の心を知らずに罪作りな男は、今日も触れそうな距離にいながら二人の距離に線引きする。
彼の言う昔の女に似てるからと、切ない目をして微笑みかける笑顔に傷ついて、つい言い返すしかなかった。
「私は私よ。比べられるのは好きじゃない」
「可愛いくねーの」