罪作りな彼は求愛方法を間違えている
苦笑しながら、私の頭を撫でる彼の姿に、明らかに恋愛対象として見てもらえていない事を今回も痛感させられ、心の傷が深くなる前に帰ろうと席を立った。
「可愛くなくてすみませんね…コウ兄、私、帰るね」
「えっ、もう帰るのか?ご飯、食べて行かなくていいのか?」
「…うん。そらくんが家でお腹空かせて待ってるから、なるべく早く帰ってあげなきゃと思ってるんだ。だから、これからはご飯まではいいや」
「あー、そうだよな。そらによろしく」
「うん、じゃあ、また来週。おやすみなさい」
財布からお金を出しながらコウ兄との会話を終え、帰ろうとした私の腕が突然、掴まれ止められた。
「そらくんって誰だ?」
彼は掴んでいない反対の手で、グラスに残っていた琥珀色の液体を何故だか一気に飲み干し、不機嫌に目を細め私を見つめた。
突然のことに戸惑っている間に焦れた声で矢継ぎに質問を浴びせてくるのだ。
「一緒に住んでいるのか?」
「いつからだ?」
「えっ?」
「いつから、そいつと一緒に住んでいるんだ?」
「先週からだけど…」
「はぁっ?先週⁈…俺は何も聞いてないぞ」
「高橋さんに言わなきゃいけない事?」
私の言葉に高橋さんは、カチンときたらしく勢いよく立ち上がった。