君と半分
そう決めた矢先、おらは嫌なものを目にした。


じい様はあの男をいつも助ける。


おいらはあの男が大嫌いじゃ。なんであんな奴を助けるんじゃ。


じい様は言った。


「ほほ、わしも好かんよ。
じゃがな、奴も一人では生きられないんだ。
誰かが助けてやらねばいかん、だろう?」


「じゃぁ、じい様じゃなくてもいいじゃないか!」


じい様は少し怖い顔で、


「…わしが助けなくて、誰が助ける?お前が助けるか?」


笑ったじぃ様においらは首を思い切り横に振った。


「…わしがいなくなれば誰かが助けるじゃろ。だが今は、わしがいる。

どうせ誰かやらねばならんのならわしがやるのだ。

お前はあやつを嫌いじゃが、見殺しに出来るか…?」


「見殺しなんて!!

…別に死んでほしいなんて思っとらん」


「一緒だ。結局、お前も誰かがやるだろうと思っておる。

まぁ、自分がやらねばとそう思えるようになったのは常に誰かを犠牲にし、誰かの犠牲にされながら生きていると悟ったからじゃ。
お前にはちと難しいかもしれんがの」


「……じい様がやるの?」

「そうじゃ」



おいらはじい様が好きだ。

だからじい様が嫌な事を進んでやるのは嫌だ。


嫌な事を進んでやる事程、無意味な事はないやんか。
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