月の光に魅せられて
「 リリーにも伝えた通り、次の舞踏会には
参加してもらうことになる…今までは父のワガママで
このような話は断っていたが、今回はそうもいかなくなったようだ 」
「 なにか特別なことでもあるんですか? 」
「 結婚適齢期を過ぎた、相手の居ない貴族の令嬢は
全員参加が義務づけられてしまってな…… 」
ただの舞踏会で、そんなことを義務づけるはずがないだろう。
街では親睦を深めると称して
第1王子の妃候補でも見つけるのではないかと
色めき立っている。
ロイバルトは寂しそうに微笑むと
城からの招待状をアリアに手渡した。
「 アリアも16になったばかりだが、
いつまでも父さんが閉じ込めておくのは良くないみたいだ。
精一杯楽しんでくるといい。 」
部屋を出ていく1人娘の背中を見て
亡き妻の姿を思い出した。
今も隣で笑ってくれていたらどんなにいいだろうか、と
少し寂しげな気持ちになった。