月の光に魅せられて
◇◇◇◇◇
「 招待状の手配は済んでる? 」
「 はい。使いの者を出したのでもう届いているかと… 」
返事を聞き満足そうに笑みを浮かべたのは
時が経ち18になったレイだ。
背は高くなり、程よくついた筋肉と少し焼けた肌により
少女と間違われることもないだろう
幼い頃から変わらないのは
その瞳の柔らかさと漆黒の髪だけだ。
見目麗しい王太子の妃に、と
近隣国や年頃の娘がいる貴族達からの縁談は、
絶えず申し込まれているが本人はどれも興味を示さない。
レイはあの夜出会った少女に想いを馳せた
あれから社交の場では
少女のことを探してみたものの
もう一度会うことは出来なかった
というのも、彼女の父が
酷く娘を溺愛しているという噂があり
少女から大人に成長していくのを見て
社交界に出せなくなっていったのだろう。
そのおかげか彼女はまだ求婚の話が出ていない
レイにとっては都合が良かった。