月の光に魅せられて
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リジナール王国の中央にある立派な城では
王太子の生誕10年を祝うため
近隣諸国の王族や多くの貴族が招かれて
豪華絢爛なパーティーが開かれていた。
始まったばかりなのにも関わらず
もう既に複数の人だかりが出来ている。
その中でも一際目立つ集団の中に
今夜の主役はいた。
艶めく漆黒のサラサラとした髪に
吸い込まれてしまいそうな程
澄んだ夜色の瞳は少し青みがかっている
一見少女に見えなくもない程に
少年は整った顔立ちをしている。
煌びやかなシャンデリアも
ここにあるものだけで
一月は暮らせるんじゃないだろうかという程の
豪華な食事も
沢山のお祝いの品も
少年の目には輝いて見えることはなかった。
“退屈”だ、と思ったのだが
それを口にするわけにもいかず
次から次へと挨拶に来る大人達を
振り払うようにその場を離れた。