月の光に魅せられて
大広間を抜け中庭に出てくれば
美しく彫刻が施された噴水から
惜しむことなく天に向かって水が吹き出され、
そよ風でさわさわと揺らめく花たちが
静かに咲き誇り、幻想的な空間になっていた。
皆、中での談笑や社交に夢中なのだろう
誰もいないと思った、
のだが、
少年は中庭の奥にある小さな人影を見つけた
近づいてみても気付いていないのか
こちらを振り向かず、じっとうずくまっている。
少年から見えているのは
月明かりに照らされ、神秘的な輝きを見せる
柔らかなダークブロンドの髪と
ふわりとした薄桃色のドレスだけだ。