月の光に魅せられて
「こんな所でなにしてるの?」
声を掛けたことで気付いたのか
小さな背中はビクッと震えながら
こちらを振り向いた。
少女は驚いたようにアメジストの瞳を見開かせている。
その瞳には、今にも零れ落ちそうな程の
涙の粒が光っていた。
肌は雪のように白くその小さな唇は
ぷっくりと赤く色づいている。
その少女は見るからに愛くるしく
穢れを知らない天使のように見えた。
「 あな…たは…だぁれ? 」
その小さな唇は震えながらも言葉を発した。
「 僕が誰なのかより、まずは君の涙を拭いてあげるよ 」
そう言って、胸のポケットから
王家のシンボルである月の刺繍が施された
ハンカチを取り出し
少女の桜色の頰に流れ落ちていく雫を撫でた。