月の光に魅せられて
少年はハンカチを渡し
「 僕とお話しない? 」
少女の手を引き、近くのベンチへ案内すると
少女は渡されたハンカチで顔を拭い
ぽつりぽつりと話し始めた。
「 さっきまでお父様と…中にいたの...でもっ…… 」
少女は再び涙を浮かべ
言葉に詰まったのか俯いてしまった
少年は、少女が話しやすくなるよう
優しく微笑みそっと手を握った。
しばらくすると落ち着いたのか
「 中にいる大人の人たちはみんな
笑ってお話ししてくれるけど怖いの…
お友達もまだいないし… 」
少女が言っているのは
きっと権力や欲にまみれた大人達のことだろう。
王子として生まれ育ってきた少年には
少女の言うことの意味がよく分かった。