孤独であった少女に愛情を
「言って欲しかったです。」

壁を背に、私は先生にそう言われる。

制服の襟で隠れる首元にもアザがある。
先生はそこを撫でるように触り、とても悲しそうな顔をした。

「気づけなかった自分が、情け無いです。

しっかり見ていれば気づけたような所にも、
たくさんのアザがある。」

先生は私の手を取りアザを見つめる。

「気づいてあげられなくて、ごめん。」

私は手を自分の方へ引き戻し、
言葉が出なくて私は首を横に何度も振った。

「家の人にされたんですか?」

私は首を横に振ることも縦に振ることもしなかった。

「最近、随分遅くまで手伝おうとしてくれたのは、
そのせいでしたか。」

先生は何も喋らない私をジッと見つめた。

そして私の目からはポタッと涙が落ちる。

「でも、そこしか私の帰る場所はない。」

そう言うと、先生は私の頭を自分の体に引き寄せた。

「痛かったですね。辛かったですね。」

耳元で囁かれる声に、
私は固まる。

「Aさん、私の家に、来ますか?」

夕方が窓から差し込み机も棚もなにもかもがオレンジに染まる中、
先生は優しく微笑み、何かを決心したようにそう言った。
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