孤独であった少女に愛情を
先生の言葉には驚いた。

『悲しくて誰かに言ってしまう』

私も言ってもいいのだろうか。
一人で押しつぶされそうになっていた私には、その言葉は新鮮で、
そんなことを思ってしまった。


だからか、その日を境に私は少しずつ先生に自分の話をするようになった。

というよりも、先生が少しずつ聞いてくるようになったんだ。

「この前の事なんですけど、誰かに言われたんですか?」

先生は棚の整理をしながらさり気なくそう聞いてきた。

私は、先生の質問に驚いた。
違いますよ、と嘘をつくことも考えたが私は
『祖母に』
とだけ言ってしまった。

棚の整理をしていた先生の手が止まる。

「そうでしたか。」

そう言うと先生はまた手を動かす。

「いつ頃なんです?」

「妹が亡くなった日です。」

「ああ、そうでしたか。」

そう先生が言い、先生と私の間には重い雰囲気が流れる。

「それは、辛かったですね。」

先生の声が狭い資料室内に響き渡った。

そしてその声が私に届くと、私の喉元は途端に締まって声が出なくなった。

返事の無い私に先生は手を止めた。

私はジッと机にある資料の一部を見つめた。
そうしていないと何かが溢れ出そうで。
< 8 / 35 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop