孤独であった少女に愛情を
「辛かったですね。」

さっきまで棚の整理をしていたはずの先生の手。

それが私の頭を優しく撫でる。

先生の声は私の心に入り込み染み渡る。
心まるごと優しさで包み込むようなそんな声。

どんどん、どんどん胸は苦しくなって、言葉に出来ないような感情が溢れ出す。
私の視界はだんだんぼやけ、
吸い込まれるように机の上に涙が溢れ落ちた。

ぽたぽたと

大粒の涙が止まらず落ちる。


それでも、声だけでもと私は必死に両手で口を塞ぎ、声を抑えた。

『辛かったですね。』

その言葉に『はい』とも『いいえ』とも言えず私は泣いた。
妹が亡くなった日から今日までの、出るはずだった涙の分まで。

「声、我慢しなくていいですよ。」

先生はそう言って、口元を押さえる私の手に優しく触れた。
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