ワケあって、元彼と住んでます。
元彼と再会。
年末、離婚してから2度目の帰省。

相変わらずコンビニ以外なんにもない街。最近は人口が減ってきたせいか、ただ単純に寒くて家にいるだけなのか、人通りが昔よりめっきり少なくなった気がする。


というかむしろ、この時期この時間にうろついている人なんていないよなぁ……。


自虐的に心の中で呟いて、最近できたばかりというコンビニに入る。
この街で5件目にできたコンビニだ。


同級生の約半数は結婚して人によっては子どももいて、残りの半数はバリバリ独身生活を楽しんでいる。

29歳、あと半年で30歳。
4年前に結婚、その2年後には離婚。
大学卒業後に入った会社に未だ居続けている。

それが今の私。



夜は母お手製のおせちらしい。朝からキッチンに立って忙しそうにしていた。

手伝いを頼まれる前に、逃げるように来たのがここだった。かと言って食べたいものや飲みたいもの、暇をつぶすようなエンターテインメントはなく、長くいても30分が限界だろう。


雑誌、新商品のお菓子、レジ横に並ぶコンビニならではのスナック……。
順番に見ていくもののあまり興味をそそられない。
目的もなくぶらぶら店の中を歩く私が怪しく見えたのか、レジに立つ中年の女性店員がチラチラとこちらを見ているのを感じる。

食べたいわけでもないのに「新商品」のポップが目立つチョコを取ってレジに並んだ。
ついでに飲む予定のなかったコーヒーも注文してしまった。


さて、困った。
買い物を終えたら出なくちゃ。
でもまだ家には帰りたくないし、どうしたものか……。


背後からの「ありがとうございました」の声に押されてコンビニを出る。

駐車場にはいつの間にか、車が1台停まっていた。


県外ナンバーだ。
この人も帰省なのかな。


着いたばかりなのかエンジンがかかったままのグレーのセダン車。
その横を通り過ぎようとしたとき、窓が開いた。



「……カホ?」


名前を呼ばれてとっさに立ち止まってしまった。

会うのは10年振りかもしれない。
ここにいるとは思っていなくて、声が出なかった。

名前も顔も分かるのに。



「あぁ、やっぱり香穂だ。久しぶり」



エンジンが消えた車から下りてくる。
頭一つ分高いその人は目尻を下げながら私を見下ろした。


そうだ、身長はこれくらいだった。


懐かしくて頬が緩む。
変わってないなぁとも思う。



「……びっくりした。瞬ちゃん?」



10年振りに再会する、私が振った、私の元彼。

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