ワケあって、元彼と住んでます。
懐かしくて喜んでしまったのは一瞬だった。
すぐに自分の今の格好を思い出して慌てる。
高校のときのジャージ。
適度にゆるくて実家に置きっぱなしだったものだ。
そしてすっぴん。
彼が知っている10代の頃のすっぴんと30手前のそれとじゃわけが違う。
これらを元彼に見られているのはキツイ。
「……じゃ!」
挙動不審なのは承知で、挨拶らしい挨拶も近況報告もしないまま元彼から離れる。
いきなり動きすぎて持っていたコーヒーがふたから少し溢れた。
「香穂、送ってくから車に乗ってて、実家でしょ?」
「え、近いからいいよ」
「いや、寒いから」
「大丈夫!散歩中だから!」
嘘じゃない。
行くあてはないけど家に帰りたくないから、もう少しブラブラする予定だった。
瞬ちゃんが声を出して笑った。