ワケあって、元彼と住んでます。
「びっくりした……。いきなり声かけないでよ」

「おう、悪いな」

「相馬も今帰るの?珍しいね、今日は残業しないんだ」

「コンペ微妙だったしな。いじけてんだ今」

「あらら」



朝にもらった試作品の感想を言おうと思ったけどやめた。
言ったらたぶん追い討ちをかけることになる。



「あー、酒飲みてえなー」

「今日はダメだよ」

「わかってるよ。彼氏のとこに帰るんだもんな」

「彼氏じゃないよ」



「彼氏だったけど」。そう言うと相馬の顔が曇った。というより訝しむように見てくる。



「……高屋、その話は来週の金曜日までに取っとけ」

「なんで」

「面白そうだから。コンペがダメだったときの肴にする」

「結果はまだ出てないんだ」

「明後日だ」

「意外に早いね」



制作のことはよくわからない。
企画して何度も試作して、決定したものが営業に降りてきて、私は初めてそこで商品を触れるから。

でも仕事の話をする相馬は、いつも以上に感情がくるくる変わっていくから見ていて飽きない。


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