早熟夫婦〜本日、極甘社長の妻となりました〜
「社長、おはようございます」

「おはよう。今日は朝から暑いな」


社長は気だるげに首元のボタンをふたつ外し、「なんでこんな日に打ち合わせなんだ……」とぼやく。

その仕草と、チラリとかいま見える鎖骨が色っぽくて、目の毒だと思いつつ見てしまう私。もうだいぶ見慣れているはずなのに、どうしてかな。

ちょっぴり胸をときめかせていると、こちらに目を向けた彼が少し身を屈め、視線を合わせてきた。なぜか顔を観察するようにじっと見つめられるので、どうしたのかとキョトンとする。


「野々宮、前髪切ったのか」

「あ、はい。よくわかりましたね」


彼が口にしたひとことで、昨日の夜切ったことを思い出し、やや眉毛が見えるくらいまでにした前髪を片手で押さえた。

ストレートのセミロングの髪を、今みたいに伸ばしている最中だと、前髪だけはセルフカットすることがある。

でも、切ったのは一センチくらいだから、気づかなくてもおかしくない。よくわかったなと軽く驚いていると、泉さんがニンマリして言う。


「そりゃー社長は〝野々宮マニア〟だから。些細な変化にも気づきますよねぇ」

「当然だ」


社長が堂々と認めるものだから、泉さんはおかしそうに笑い、私は恥ずかしさと少々の呆れでしおしおと俯いた。
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