早熟夫婦〜本日、極甘社長の妻となりました〜
しばらく和やかに談笑しながら箸を進めていると、ふいに鬼頭さんが切り出す。


「おふたりとも、私に気を遣って誘ってくれたんですか？」


彼女はこの食事会の意図に気づいていたらしい。私は冴木さんと目を見合わせ、こくりと頷いた。


「ダンジョンの一件から、ちょっと元気がないように見えたので」

「そうですか」


鬼頭さんは、私の言葉を肯定するように目を伏せた。そして一旦箸を置き、ゆっくりと話しだす。


「……自分に失望していたんですよ」


私たちも手を止め、彼女の話に耳を傾ける。


「私、愛想がないので、クライアントと打ち合わせをすると態度が悪いと取られてしまうことがたまにあるんです。なんとか笑顔を作ってみるんですが、それも不自然で怖いらしくて」


無表情で語っていた鬼頭さんは、「こうやって」と、ギギギと音がしそうな調子で無理やり口角を上げた。

……うん、引きつっている。

冴木さんも苦笑するしかないみたいだ。自然に微笑めばすごく綺麗なのに。

以前、一度だけ見た微笑みを思い返している間にも、アンドロイドな彼女は表情を無に戻して話を続ける。
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