早熟夫婦〜本日、極甘社長の妻となりました〜
冴木さんの言葉には、私も同感。ただ、その最後のほうは彼も伏し目がちになって、どことなく表情が暗くなった気がした。
……どうしたんだろう。いつも明るくにこやかな彼にしては珍しい。
若干気になったものの、すぐに目線を上げた彼は普段通り人懐っこく笑っていたので、些細な引っかかりは呆気なく消えていく。
「でも、今回のことで俺も勉強になりました。クライアントの言いなりになってばかりじゃなくてもいいんだって」
「前の会社では言いなりだったんですか」
だいぶ柔らかな表情になった鬼頭さんが口を挟むと、冴木さんは嘲笑を漏らして認める。
「そうですよ。会社自体が〝クライアントが神様!〟っていうスタンスだったんで、どうしようもなかったんです」
それを聞いた私と鬼頭さんは、そういえばブラックだったんだっけ、と察して無言で頷いた。
尚くんがデザイナーを大切にする社長でよかった。けれど、今回クライアントを説得できた要因は、彼の交渉術だけじゃないはずだと思い、私は口を開く。
「鬼頭さんの熱意が伝わっていたからこそ、向こうも納得してくれたんですよね。本当によかったです」
「……ええ。救われました」
口元を緩める鬼頭さんからは、安堵と嬉しさが滲み出ているのが伝わってきた。
……どうしたんだろう。いつも明るくにこやかな彼にしては珍しい。
若干気になったものの、すぐに目線を上げた彼は普段通り人懐っこく笑っていたので、些細な引っかかりは呆気なく消えていく。
「でも、今回のことで俺も勉強になりました。クライアントの言いなりになってばかりじゃなくてもいいんだって」
「前の会社では言いなりだったんですか」
だいぶ柔らかな表情になった鬼頭さんが口を挟むと、冴木さんは嘲笑を漏らして認める。
「そうですよ。会社自体が〝クライアントが神様!〟っていうスタンスだったんで、どうしようもなかったんです」
それを聞いた私と鬼頭さんは、そういえばブラックだったんだっけ、と察して無言で頷いた。
尚くんがデザイナーを大切にする社長でよかった。けれど、今回クライアントを説得できた要因は、彼の交渉術だけじゃないはずだと思い、私は口を開く。
「鬼頭さんの熱意が伝わっていたからこそ、向こうも納得してくれたんですよね。本当によかったです」
「……ええ。救われました」
口元を緩める鬼頭さんからは、安堵と嬉しさが滲み出ているのが伝わってきた。