早熟夫婦〜本日、極甘社長の妻となりました〜

目をしばたたかせた冴木さんだったが、すぐに優しく微笑み、「そっか。うまくいくといいね」と応援してくれた。

やっぱりいい人だな、と感じる一方、彼が抱えているかもしれない〝なにか〟が再び頭の中を巡り始める。

でも、悩みや秘密のひとつやふたつは皆が持っているものだし、詮索することではない。

ただ、冴木さんの恋愛事情についてはちょっとだけ気になる。今彼女はいるのかとか、好みのタイプとか。もし鬼頭さんが恋に落ちたのだとしたら、全力で応援したいな。

ふたりの気持ちを勝手に決めつけてはいけないのに、どうしても期待してしまう。

「じゃあ、改札まで一緒に行こう」と言う彼に従って歩きながら、私の胸には瑞々しい果実みたいな甘酸っぱさが密かに広がっていた。


だいぶ住み慣れた上品な外観のマンションに着くと、エレベーターで私たちの部屋があるニ十階を目指す。

最上階から二階下で、防犯の面でも騒音の面でも、特に不満を感じたことはない。むしろ、私には贅沢すぎる住まいだ。

ドアを開ければ、柔らかな明かりに迎えられる。私が先に帰っていることのほうが多いから、なんだか不思議な気分。