早熟夫婦〜本日、極甘社長の妻となりました〜
泉さんもとても嬉しそうに、というより楽しそうに、手をぐっと握って明るい声で励ます。


「大丈夫、ふたりにはゲームっていう共通の話題があるじゃないですか! 今話して距離を縮めましょう。絶好のチャンスです」

「そうですよ。私たちもサポートしますから」


ふたりで盛り上がるも、鬼頭さんはあまり乗り気ではないらしく、俯き気味だ。


「……こんな地味な私に好意を持たれていると知ったら、きっと引くに違いありません。二十七にもなって、ロクな恋愛経験もない女なんて」


彼女は自嘲する言葉をこぼし、ワインをぐいっとひと口喉に流し込む。

そうか、鬼頭さんはとってもウブで純粋で、自分に自信がないんだ。いいところはたくさんあるのに、気づいていないのだろう。

さらっと褒める冴木さんならきっと、彼女の自信を引き出してくれるんじゃないだろうか。勝手な推測だけれど、ますます応援したい。

私は三人で食事したときのことを思い返しながら、穏やかに諭す。


「冴木さんは、そういうことでは引かないはずですよ。この間、鬼頭さんに元気がないって気がついていたし、お世辞じゃなく笑顔もいいって言っていたし、相手の本質を見ているというか……ちゃんと向き合ってくれる人だと思います」
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