早熟夫婦〜本日、極甘社長の妻となりました〜
「大丈夫です。さっき頼んだばかりなんで」

「オレンジジュース? そっか、まだ未成年だもんね。可愛い」


彼が屈託なく笑って、なにげなく口にした〝可愛い〟は、子供に対するそれと似たようなものだろう。嫌味な感じはまったくしないが、私もちょっとからかいたくなる。


「冴木さんこそ。なんですか? この乙女なカクテル」

「ストロベリー・コラーダってやつ。初めて頼んでみたけど、想像以上にピンクでびっくり」


そう言ってストローでちゅーっと吸い上げる彼が、男性にしておくのはもったいないくらい可愛くて、つい笑ってしまった。

でも、大きめのデザインTシャツの重ね着は、年相応の男の人らしくてよく似合っている。

いつもオシャレだなと思っていると、彼は少し考えを巡らせるように黙ったあと、こちらに向き直ってこんな提案をしてくる。


「ね、キョウちゃん。バルコニーに出てみない?」

「あー……」


外に出たらすぐ戻るわけにもいかなそうだし、どうしよう。鬼頭さんの状況は……?

チラリと席のほうを見やると、ちょうど泉さんと視線が合う。その向かい側には、いまだに頭を抱えている鬼頭さんの姿が。

泉さんはやれやれといった表情で、〝ごめん、延ばして〟と、口パクとジェスチャーで訴えてきた。この調子だと、話せるにはまだまだかかるな……。
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