早熟夫婦〜本日、極甘社長の妻となりました〜

私はとある事情で、ずっと前から親しくしていた社長、もとい尚くんと、去年の夏の終わりに学生結婚をした。

恋愛の末でも、政略的でもなく……なんと名づけたらいいかわからない特殊なカタチの結婚だったが、彼が恩情で私を助けてくれたことだけは確かだ。

このことを知っているのは、彼の両親と、ごく親しい友達だけ。高校時代も今現在も、周りには言わずに〝野々宮〟として過ごしている。

秘密にしているのは、気まずいという理由がひとつ。高校生のうちに結婚する人は多くないから、どんな目で見られるか不安でもある。私たちの場合、なれそめも説明しづらいし。

デザインの専門学校に通いながら始めた、勉強を兼ねたバイトも、本当は別の場所でするつもりだった。

しかし、尚くんが『俺のとこに来い』と言い張るので、皆に内緒にしてくれるならという条件で入ったのだ。

夫と同じ職場に入ることで、甘えていると思われるかもしれないという懸念があったのも、秘密にしているもうひとつの理由である。

それなのに。

まさか、あんな態度を取るようになるとは思わなかった。内心、私たちの関係を疑っている人もいるかもしれないし、内緒にしている意味がないじゃないか。

……とはいえ、まんざらでもない自分がいる。その理由はごくシンプル。

旦那様のことが誰よりも好きだから、だ。
< 13 / 270 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop