早熟夫婦〜本日、極甘社長の妻となりました〜
とりあえず話は切り上げられたけれど、まさかこんな展開になるとは……。

鼓動が乱れたまま涼しい店内に入ると、バルコニーの向かいに面したカウンターに、泉さんがいるのが目に入った。

彼女も私に気づき、親指と人差し指の先をくっつけてOKサインを出している。やっと鬼頭さんの心の準備が整ったらしい。

ああ……めちゃくちゃ気まずいけど、ここは予定通り冴木さんを連れて行くしかない。ただ、彼を疲れさせないように気を配らないと。


「冴木さん、ここからは皆で話しませんか? 鬼頭さんや泉さんとも、気を遣わない仲になれると思うんです」


先ほどの告白は一旦置いておいて、同じ仲間として楽しく過ごしたい気持ちを伝えた。

もしかしたら嫌かな……と懸念したものの、冴木さんは嫌そうな顔など見せず、むしろとてもいい表情で「そうだね。ありがと」と言った。

それに安堵して席に向かおうとしたとき、彼が思い出したように足を止めてこちらを振り向く。


「あと、俺のあんな話にも付き合ってくれて、ありがとう」


優しい微笑みと共にお礼を言われて、私も自然に笑顔になった。

いくらか心が軽くなっただろうか。彼の役に立てたなら、素直に嬉しい。
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