早熟夫婦〜本日、極甘社長の妻となりました〜
……大丈夫、別に心配することはない。偶然会って、懐かしくなって話しているだけだ。そんなの、よくあることでしょう。

そう自分に言い聞かせ、脳裏にチラつくツーショットをなんとか消し去ろうとする。今は冴木さんと皆で楽しく話すことに集中しよう。

私は汗を掻いたグラスを手に取り、オレンジジュースで喉と荒立ちそうな心を潤した。


鬼頭さんはものすごく緊張しているのが伝わってきたけれど、ゲームの話が進むにつれ饒舌になってきて、ようやく本領発揮できたという感じ。

冴木さんも、この笑顔が無理しているものだとしたら役者になれるよ、というくらい自然に笑って楽しんでいた。

もちろん、私も楽しい。ただ、やっぱりどうしても、尚くんと元カノらしき女性のことが頭から離れなくて、ちらちらと様子を窺ってしまう。

あれからすぐ尚くんはこちらに戻ってきて、再びお酒を酌み交わしているものの、どこか表情が浮かないように見える。

なにかあったのかな……なにを話していたんだろう。

気になりすぎて、カウンター席に座る彼をついじっと見ていたとき、その視線を察したかのごとく彼がこちらを振り向いた。私はギクリとして、咄嗟にそっぽを向く。
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