早熟夫婦〜本日、極甘社長の妻となりました〜
彼は根っからの過保護体質で、私が子供の頃からなにかと気にかけてくれていて、今もその延長なのだということはわかっている。

妻であっても、そこにあるのは家族愛のようなもので、男女の愛ではないと。

歳が離れているし、お互い昔から親戚のように接しているせいで、女として見られているとは思えないのだ。当然、夫婦にあるべき夜の営みだって皆無。

八月の結婚記念日で丸一年になるし、けじめをつけるためにも気持ちを伝えたらいいと思うのだけど……。

もしも私の恋心を受け入れてもらえなかったら、離婚を切り出されてしまうんじゃないか。そんな不安があって、なかなか勇気を出せそうにない。

本当の夫婦って、どうすればなれるのかな。


結婚しているのにこんなことを考えるのもおかしいよね、と心の中で自嘲しつつ、今日も任された事務仕事をこなしている。今日は午後から講義があるため、午前中だけのシフトだ。

泉さんから頼まれて、経理処理に必要な紙の請求書がまとめられているファイルを取りに、オフィスの一角にあるデザイナーズルームに向かう。

小部屋となっているそこには様々な資料が保管されていて、丸いテーブルにはデザインのラフや色鉛筆などが置かれている。

主にデザイナーが使用する部屋だが、中でも〝Akaru(アカル)〟がこもって作業していることが多い。
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