早熟夫婦〜本日、極甘社長の妻となりました〜
げっそりした加々美さんが気晴らしにオフィスを出ていくのが想像できて、私は苦笑を漏らした。
これでいこう!と決めた矢先に修正依頼が来るのは、なかなかツラいだろう。彼は人気デザイナー故にいくつも案件を抱えているし、大変さは想像に難くない。
同情しながら、尚くんの背後にある棚に向かうと、落ち着きのある低音ボイスが投げかけられる。
「今朝、なんであんなに急いで出たんだ?」
ピクリと反応した私は、ファイルに伸ばした手を一時停止させる。
そういえば、今朝は例のものを手に入れるために、尚くんがまだ朝食を食べている最中にさっさと出たのだった。いつもならそんなに急ぐことはないのに。
会社で顔を合わせるまで、前髪を切ったことに彼が気づかなかったのも、きっと私がバタバタしていたせい。
怪訝そうな顔をしている尚くんを横目でちらりと見て、私はいたずらっぽく口角を上げて答える。
「家に帰るまで内緒」
「なんだよ、気になるだろうが」
不満げに口を尖らせる彼が、ちょっぴり可愛い。
でもそれはすぐに崩れて、〝仕方ないな〟というような小さな笑いに変わる。そして腕時計を見下ろし、椅子に置いてあったビジネスバッグを手に取った。
これでいこう!と決めた矢先に修正依頼が来るのは、なかなかツラいだろう。彼は人気デザイナー故にいくつも案件を抱えているし、大変さは想像に難くない。
同情しながら、尚くんの背後にある棚に向かうと、落ち着きのある低音ボイスが投げかけられる。
「今朝、なんであんなに急いで出たんだ?」
ピクリと反応した私は、ファイルに伸ばした手を一時停止させる。
そういえば、今朝は例のものを手に入れるために、尚くんがまだ朝食を食べている最中にさっさと出たのだった。いつもならそんなに急ぐことはないのに。
会社で顔を合わせるまで、前髪を切ったことに彼が気づかなかったのも、きっと私がバタバタしていたせい。
怪訝そうな顔をしている尚くんを横目でちらりと見て、私はいたずらっぽく口角を上げて答える。
「家に帰るまで内緒」
「なんだよ、気になるだろうが」
不満げに口を尖らせる彼が、ちょっぴり可愛い。
でもそれはすぐに崩れて、〝仕方ないな〟というような小さな笑いに変わる。そして腕時計を見下ろし、椅子に置いてあったビジネスバッグを手に取った。