早熟夫婦〜本日、極甘社長の妻となりました〜
〝今の〟って、ネクタイを直したのがよかったの? お母さんみたいだとは思われてなかった、セーフ!
……じゃない!
顔が赤くなっていることを自覚しつつ、私はふくれっ面で彼の胸を押し返して物申す。なるべく声を潜めて。
「そ、そういうこと、皆の前では絶対言わないでね!?」
「てことは、ふたりきりのときならいいんだな?」
したり顔の彼に一枚上手な返しをされ、一瞬うぐ、と言葉に詰まってしまった。
そりゃあ、尚くんになら言われて嫌な気は全然しないけど、そういうことじゃないのですよ……。
と、心の中でもごもご言っているうちに、彼は含みのある笑みを浮かべて「いってきます」と告げ、部屋から出ていってしまった。
ひとりになり、はぁ、と小さく息を吐き出す。
結婚して以来、尚くんは色気のある冗談を口にすることが多くなってきた気がするけれど、こちらは複雑な心境だ。
ちょっとは女として見てもらえているのかも……という期待と、どうせただからかわれているだけだろう、という諦めが入り混じって。
──尚くん。私はあなたの本物の奥さんになりたいよ。
あなたは、私のことをどう想ってる?
胸の中だけでしか問いかけられない、情けない自分にもう一度ため息をつき、今度こそファイルを手に取った。
……じゃない!
顔が赤くなっていることを自覚しつつ、私はふくれっ面で彼の胸を押し返して物申す。なるべく声を潜めて。
「そ、そういうこと、皆の前では絶対言わないでね!?」
「てことは、ふたりきりのときならいいんだな?」
したり顔の彼に一枚上手な返しをされ、一瞬うぐ、と言葉に詰まってしまった。
そりゃあ、尚くんになら言われて嫌な気は全然しないけど、そういうことじゃないのですよ……。
と、心の中でもごもご言っているうちに、彼は含みのある笑みを浮かべて「いってきます」と告げ、部屋から出ていってしまった。
ひとりになり、はぁ、と小さく息を吐き出す。
結婚して以来、尚くんは色気のある冗談を口にすることが多くなってきた気がするけれど、こちらは複雑な心境だ。
ちょっとは女として見てもらえているのかも……という期待と、どうせただからかわれているだけだろう、という諦めが入り混じって。
──尚くん。私はあなたの本物の奥さんになりたいよ。
あなたは、私のことをどう想ってる?
胸の中だけでしか問いかけられない、情けない自分にもう一度ため息をつき、今度こそファイルを手に取った。