早熟夫婦〜本日、極甘社長の妻となりました〜
「きゃ!? さっ、冴木さん……!」


慌てて胸を押し返すも、両腕でしっかりとホールドされて全然離れられない。冴木さん、見かけによらす力が強い……!

彼は腕の中でもがく私を見つめ、いたずらっぽく口角を上げる。


「離れられないでしょ。俺もれっきとした男だってわかってもらえた?」

「う……はい」


そうですね、可愛いだけではないのだと実感いたしました。

白旗を挙げた気分になり、抵抗するのを諦めて身体の力を抜く。そんな私を、彼は改めて丁寧に優しく抱きしめた。


「そんな泣きそうな顔を見たら、抱きしめたくもなる。君を奪うチャンスでもあるしね」


ドクドクと速まる鼓動を感じながらじっとしていると、冴木さんは若干声のトーンを下げて「でも……」と続け、嘲笑を漏らす。


「他の男を想って弱ってる子につけ込むのは、ちょっと虚しいかな」

「冴木さん……」

「好きなのに、どうしてうまくいかないんだろうね」


彼が口にした実感がこもったひとことは、私の胸にもとても響くものだった。

想われているのに応えられなくて、想っていても簡単には届かなくて。本当に、人の気持ちほど難しいものはない。
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