早熟夫婦〜本日、極甘社長の妻となりました〜
そんな彼を尚くん、私をキョウ、とお互いに呼び始めるのに、長い時間はかからなかった。

お人好しの母が時々料理を差し入れすると、そのお礼にと、尚くんが私たち親子を食事に誘ってくれて。

そのうち、母がいないときは尚くんの部屋に遊びに行ったり、空いた時間に勉強を教えてもらったりするようになって、親戚のお兄ちゃんみたいに慕っていた。

尚くんも、実家は四国にあってなかなか帰れないため、『ここが今の俺のホームだな』と、私たちの部屋で安心しきった様子で言っていたっけ。


彼は自分の部屋の整理整頓はたいしてできないくせに、人の面倒見はよかった。自分の友達や同僚はもちろん、私や母、知らない子供にも分け隔てなく接することができる人。

顔に似合わないオヤジギャグや面白い発言で周りを笑わせたかと思えば、真剣な表情で家でもデザイン関連の作業をしていたりする。

仕事には熱心に取り組み、向上心をなくすことなく努力を惜しまない。そういう部分を自分ではまったくすごいと思っていないところも、私は今でも尊敬している。

尚くんが信頼できる人だからこそ、私も母も本当の家族のように接して、和やかで楽しい生活を送っていた。
< 21 / 270 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop