早熟夫婦〜本日、極甘社長の妻となりました〜
『どうなっても俺が責任を負う覚悟くらいは、とっくにできてるよ』


そう言って加々美の手から受け取った婚姻届は、引き出しに入れて鍵をかけた。これを出さなくても、杏華を守れる方法がひとつだけあったのだ。

それは、お互いが結婚を意識すること。真剣な交際をして生計を共にしていれば事実婚も認められるし、未成年の杏華と一緒に暮らしても問題ない。

嘘をつくことになってしまうが、彼女はまだ若いし、俺たちは恋人同士でもない。そんな状態で結婚の意識を持たせるためには、本当に入籍したと思わせるのがいいと考えた。

婚姻届は〝結婚を前提に交際している〟という証明にもなる。いざというときにこれを持っていれば、なにかと安心だろう。


この事実を明らかにするのは、彼女に好きなヤツができて俺と別れたくなったときか、もしくは──俺を男として好きになってくれたときか、そのどちらかだ。

そのときまで、杏華に嘘をつき、偽りの結婚生活を送らせるという罪悪感を抱きながら日々を過ごす。それが、俺の選んだ道だった。

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