早熟夫婦〜本日、極甘社長の妻となりました〜
そういえばいつだったか、あいつは俺の性欲がどうのと赤裸々な心配をしていたな。

そりゃあ溜まるに決まってる。風俗の類の世話にはならないが、自分で処理するのも虚しくてだな……と、そんなことバカ正直に言えるわけねぇだろが。

とにかく、杏華に俺のことも意識してもらいたいがため、そして他の男をけん制するため、会社では冗談めかした過保護っぷりを見せつけ、家では甘く迫った。

かりそめの夫婦生活を、これからもずっと続けられることを願って。


そんな矢先、懸念していたことが起こる。冴木柊斗というライバルの登場だ。

杏華と年が近く、可愛い系のイケメンで人懐っこい性格から、こいつは要注意かもしれない、と危惧していた。

人物像だけじゃなく、デザインのセンスも申し分ないし、女子が惹かれる要素は十分持っている。

案の定、ふたりは仕事を通して仲良くなり始め、俺の中にくすぶる不安は現在進行形で広がっている。

冴木と鬼頭とで飯を食いに行ったと聞いたときも、なんだか楽しそうにしている彼女に子供じみた嫉妬をしてしまった。


『私、尚くんの匂いしかしないと思うよ』


彼女が口にしたひとことには安堵させられたものの、その華奢で柔らかな身体を抱きしめても、どこか安心しきれない自分がいた。
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