早熟夫婦〜本日、極甘社長の妻となりました〜
おそらく、冴木の家庭環境を知っているせいだろう。

入社希望者と面接をするとき、俺は決まって『自分を色に例えると何色か？』という質問をしている。

その返答の仕方で応用力を見極める目的もあるが、単純にその人が自分に持つイメージを聞いてみたいという好奇心も大きい。仕事柄、色に関しては興味があるし。

冴木にも聞いてみたところ、彼は目を伏せて少々考えたあと、『紫です』と答えた。青と赤、相反する色が共存しているように、自分も二面性を持っているからだと。

気になって掘り下げてみれば、彼はぽつりぽつりと話し始めた。

幼い頃に養子となった経緯から、皆に嫌われないように、極端に言えば自分を守ろうとして〝いい自分〟を作るようになったという事情を。

一対一で、ほぼ雑談のような面接だったから打ち明けてくれたのだろう。俺はそれを聞き、冴木が苦労してきたことと、心優しい人間であることを理解した。

本当の両親がいないという点では、境遇が似ている杏華とは解り合えるかもしれない。お互いによき理解者となって、そこから親密になる可能性も十分ある。

杏華が俺のすぐそばにいても、彼女の心が奪われるのでは、という不安は消えることがなかった。
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