早熟夫婦〜本日、極甘社長の妻となりました〜

これまで長年抑え続けてきた想いと、くすぶっていた不安や嫉妬が、アルコールが引き金となって表面化してしまったのだろう。

ずっと欲しかったあいつの唇は、まるで熟した果実だ。想像以上に糖度が高く、このまますべて食い尽くしてしまいたくなるほどの誘惑に満ちていた。

……しかし、結局寝たフリをすることでなんとか暴走を止めた自分は、野々宮マニアどころか男の名が廃るかもしれない。

だがどうしても、こんな成り行きで一線を越えるようなことにはしたくなかったのだ。


杏華には、もう一度ちゃんとプロポーズをしたい。

抱き続けてきた想いと、あえて入籍しなかった理由を打ち明け、俺の勝手でそんなふうにしてしまった謝罪をする。

それらを全部受け入れてくれるのなら、偽りの婚姻を結んだ日を本物の結婚記念日にしよう。

どうか、その瞬間も、彼女にはいつもの笑顔でいてほしい。