早熟夫婦〜本日、極甘社長の妻となりました〜
婚姻届を再び引き出しの中に入れると、鍵をかけるのはあとにしてひとまず電話を優先する。

ディスプレイを見て、軽くため息をついた。画面をタップして耳に当てると、無愛想な声を出す。


「なにか用か?」

『素っ気ないわね、二年ぶりの電話なのに』


むすっとしているのがわかる電話の相手は、昨日打ち合わせで会ったばかりの未和子だ。

その前にも偶然レストランで出くわし、最初は気まずさがあったものの、話してみれば二年前と変わらない態度で接することができた。

むしろ、あの頃より良好になったように思う。別れる前の数か月間は、進藤社長とのいざこざがあったり、俺自身の気持ちの問題でケンカになったりと、ギスギスしていたから。

俺は改めて当時のことを謝った。未和子も、なにも悪くはないのに反省していると言い、今さらながら和解したのだった。

天真爛漫なところがある彼女は、喜怒哀楽もはっきりしている。今もむくれたかと思いきや、あっさりとビジネスモードに切り替わる。


『一応確認しておこうと思って。明後日のうちのレセプションパーティー、予定通り来れるわよね?』

「ああ、そのつもりだよ」


答えながら、ひとりでは余裕がありすぎるソファに深く腰かけた。
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