早熟夫婦〜本日、極甘社長の妻となりました〜
悶々と考えていると、彼女は『そっか、そういうことね……』と、独り言を呟いた。そして、力強い口調で宣言する。


『私、尚秋のこと諦めたわけじゃないから。あなたにもらい損ねた愛が、今も欲しい』


はっきり言われ、心が乱れる。予想はしていたが、悩ましいことだ。


「未和子、だから──」

『せっかく再会できたんだもの、足掻いてもいいでしょう? 二年前の後悔をなくしたいの』


説得しようとしたものの、彼女の想いは揺らがないようだった。

二年前、未和子は自分の意思よりも、進藤社長と俺との関係を優先して別れを切り出したのだと思う。だから彼女の気持ちもわからなくはないが、俺がそれに応えてやることはできない。

どう言えば納得してもらえるかと考えあぐねている間に、『じゃあ、またね』と告げられて電話は切れた。

ああ、厄介なことに……。杏華とのことに加え、未和子も入り込んでくるとは。

久々に、頭の中も心の中もこんがらがる感覚を覚え、小さなため息をついて窓の向こうに目をやる。

夜空に重なっては消える美しい光の線は、それぞれの交錯する想いを表しているかのようだった。

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