早熟夫婦〜本日、極甘社長の妻となりました〜
『実は野々宮さんが熱を出して、ついさっき早退したんです。冴木さんが介抱してくれていましたが』

「なに?」


聞き捨てならない報告に、俺はぎゅっと眉根を寄せる。

杏華が熱を出して早退? しかも、冴木に介抱されていただと?

急激に焦燥感が湧き上がってくる俺に、鬼頭は淡々と言う。


『ほぼ間違いなく、冴木さんの恋の矢印は彼女に向いていますね。野々宮マニアの社長には、一応お伝えしておいたほうがよろしいかと』


泉に続き、お前もか鬼頭。優秀なヤツばっかりだな、うちの会社は。

俺の恋心を汲み、わざわざ報告してくれる部下たちには頭が下がる思いで、「わかった。ありがとう」と感謝した。

冴木は最初から杏華を気に入っていたようだし、やはりそうか、という感じだ。それでも当然、嫉妬や危機感は増すばかりだが。

気が気じゃなくなっていると、珍しく若干歯切れの悪い口調で、ぶつぶつと話す声が聞こえてくる。


『個人的には、社長と野々宮さんの幸せを願っています。私の恋路が明るくなる可能性が、一パーセントくらいは上がるかもしれないので……って、こんなふうに思うのすらおこがましいんですが』

「ん?」
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