早熟夫婦〜本日、極甘社長の妻となりました〜

横浜に着き、大急ぎでまず大事な私用を済ませたあと、込み上げる焦燥感を必死に抑えてSHINDOUのどデカい本社ビルへ向かった。

レセプションパーティーが始まるのは午後七時からだが、これに出ている場合ではなくなったため、その一時間以上前に乗り込んで手を打つことにしたのだ。

杏華の体調も気になるが、仕事を疎かにするわけにもいかない。なるべく速やかに用を済ませ、本社をあとにする。


「尚秋?」


早足でエントランスに向かっていたとき、怪訝そうな声に呼び止められた。振り向いた先にいるのは未和子だ。

数人の社員と一緒にいた彼女は、仲間たちに声をかけてこちらに駆け寄ってくる。

パーティーの準備も大詰めなのだろう、他の社員はさっさとエレベーターホールのほうへ向かっていった。

未和子は驚いたように目を丸くして言う。


「早いじゃない。外で時間潰すの?」

「いや。悪いが、今日は出席できなくなった。どうしてもはずせない用ができて」


早くあいつのもとへ行きたいと逸る気持ちを抑え、そう伝えた。

それだけで、勘が鋭い未和子は瞬時に感じ取ったらしい。表情がみるみる強張っていく。
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