早熟夫婦〜本日、極甘社長の妻となりました〜
「……まさか、また〝キョウちゃん〟？」


否定しない俺を見て、唖然としていた彼女はぎゅっと眉根を寄せる。


「仕事よりも、他人のご近所さんが大事なの!?　あなたは自分のことを犠牲にしすぎだわ。どうしてそんなに、あの子がいいのよ……」


未和子は悔しさと悲しさが入り混じった顔で、次第に弱々しく声を震わせた。

二年前と同じ気持ちにさせてしまって申し訳なく思いながら、俺は苦笑を漏らす。


「理屈は俺にもわからない。十も下の女にこんなに惚れるなんてな」


まったくの予想外だった。妹同然だった女の子が、欲しくてたまらなくなるなど。


「でも、自分を犠牲にしたっていう感覚はないし、これからもするつもりはない。今回の仕事の件も、今社長と話してきたから」


俺の言葉に、唇を噛みしめて俯いていた未和子が目線を上げる。

パーティーに出られない代わりに、今しがた社長に挨拶をし、新製品についてのコンセプトをできる限り詳しく聞いてきた。

現社長は進藤社長よりもだいぶ若く、忙しい中、アポなしだったにもかかわらず快く会ってくれて、とても温厚で感じのいい人である。

彼の明確なビジョンを聞いている間にもイメージを思い描くことができ、今度こそ上手くやれるのではないかと直感した。
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