早熟夫婦〜本日、極甘社長の妻となりました〜
それか、もしや……私の体調を気にして早く帰ってきたの?


「尚くん、パーティーかなにかがあるんじゃなかったっけ?」


婚姻届の件をよそに、ベッドに片手をついて私を見下ろしている尚くんに問いかけた。彼は一瞬キョトンとしたあと、ふっと小さな笑みをこぼす。


「ああ、それはもういいんだ。気にするな」


その言い方から察するに、きっと仕事より私を優先したってことだよね? そのせいで尚くんが大変な思いをすることにはならないの?

やっぱり私は、お荷物でしかないんじゃないだろうか。


「……また、私のために?」


私はゆっくりと上体を起こし、ぽつりと呟いた。再び腰を下ろした尚くんを、眉を下げて見つめる。


「尚くんは自分のことを犠牲にしすぎだよ。仕事も、プライベートも……恋愛も、全部好きなようにできないでしょう。本当は、もっと自由に生きたいんじゃないの?」


未和子さんの姿や言葉を脳裏に過ぎらせながら、はっきり問いかけてみた。

彼はわずかに眉根を寄せ、落ち着いた口調で返す。


「そんなふうに思ったことは一度もない」

「嘘。だって婚姻届、出してないじゃない……」
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