早熟夫婦〜本日、極甘社長の妻となりました〜
葬儀が終わっても母が死んだという実感はなかったが、食事や勉強、笑うことや泣くことまでも忘れたかのように、私はただ息をするだけ。

しかも、昼間は連日の猛暑。そんな状態でまともにいられるわけもなく、軽い熱中症にかかり数日で倒れた。

毎日私の様子を見に来てくれていた尚くんのおかげで、すぐに病院に連れて行ってもらえたため回復は早かったけれど、心が癒えることはない。

病院からの帰り道も抜け殻状態で、ぬるい風がまとわりつく夜空の下をとぼとぼと歩いていた。どこか遠くのほうから花火の音が聞こえてきたが、そんなことはどうでもよかった。

アパート近くの誰もいない公園に差しかかったとき、黙って隣を歩いていた尚くんが『キョウ』と呼ぶ。


『結婚しないか、俺と』


次いで聞こえてきた、あまりにも突拍子のないひとことに驚き、私は数日間下に向けてばかりだった顔をパッと上げた。

花火も、星も見えない夜空をバックに、彼は仕事のときとはまた違う真剣さを露わにして私を見下ろしている。


『お前をひとりにはさせておけない。これからもっと、ずっと俺がそばにいてやる』


壊れそうだった私の心をすごい速さで修復していくような、力強い言葉を口にする彼は、すでに決心しているようだった。
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