早熟夫婦〜本日、極甘社長の妻となりました〜
嘲笑を浮かべる彼に、胸がきゅっと締めつけられる。彼も、私と同じように葛藤していたのだろうか。

その苦悩など知る由もなかった私は、決まりが悪くなって肩をすくめる。


「私、子供の頃からの延長でお世話してくれてるものだとばっかり……」

「俺はお前が思うより、面倒くさがりで自分勝手な男だ。ただの馴染みってだけで、夫婦ごっこまでできるかよ」


尚くんは呆れた笑いをこぼし、いつものように私の頭に手を伸ばす。


「だから、キョウが謝る必要なんかない。全部俺がやりたくてやったことだ。一緒に暮らすことにしたのも、お前のことを優先するのも……ここに何度もキスしたのも」


髪を滑った手が顎まで移動してきて、私の唇に人差し指がちょんと触れた。その瞬間、ぼっと火がついたかのごとく頬が火照る。

キ、キスって、暑気払いをやったあの夜のことだよね!?

「覚えてるんじゃん!」と叫ぶと、尚くんはいたずらっ子みたいに笑った。

恥ずかしいな、もう……。今、顔が熱いのは絶対に熱のせいじゃない。いろいろと衝撃的で、具合の悪さも気にならなくなっているよ。
< 240 / 270 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop