早熟夫婦〜本日、極甘社長の妻となりました〜
私は口の端を引きつらせ、先生にしか注目していない瑠莉にコソッと耳打ちする。


「先生の隣の女の人、さっき話した未和子さん」

「マジ!?」


ギョッとする彼女の声に反応したのか、NIKKO先生が話しながらこちらを振り向く。


「まったく、未和子ちゃんはバリキャリのくせに恋愛となると……あらっ!?」

「恋愛となるとなによ? ……あ」


まず先生が私たちに気づき、今日もバッチリメイクを施した顔をぱっと輝かせた。

それにつられて、とっても不機嫌そうな顔で振り向いた未和子さんも、私と目が合って一時停止する。


「こ、こんばんは」


瑠莉と声を合わせ、微妙な笑みを浮かべて会釈すると、NIKKO先生が顎の下で手を組んで嬉しそうに笑う。


「こんなところで会うなんて、すごい偶然ね~! なになに、ふたりとも韓流好っ──」


話している最中の彼女を、未和子さんが押し退けるようにして腰を上げ、私の前に立ちはだかった。

ひぃぃ、恐ろしい。美人の怒っていそうな無表情は迫力がある。


「野々宮さん」

「は、はい……!」


腕組みをした彼女の毅然とした口調に、私は緊張して背筋をピンと伸ばす。
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