早熟夫婦〜本日、極甘社長の妻となりました〜

尚くんは彼女の告白を完全に断ったらしいし、恨みつらみを吐かれるのかもしれない。そう思い、覚悟したのだが……。


「あなた、激辛料理は食べられる？」

「はい？」


投げかけられたのはまったく関係ない問いかけで、私は思いっきり肩透かしを食らった。



未和子さんが私と話したいと言うので、しばしNIKKO先生と席を交替することにした。

ふたりは十年来の友人だそう。こんな繋がりがあったとは……世間は狭い。

それにしても、未和子さんは初めて会ったときのように、いたって普通に接してくるので、私は逆にビクビクしている。


「私、失恋したときは激辛料理を食べてスッキリするの。ここのブルダックが最高なのよ。どうぞ」

「あ、いただきます……。……かっら！」


差し出された真っ赤な鶏肉を、とりあえずひと口いただいてみたものの、美味しさのあとにとてつもない辛さが襲ってきて、慌ててお冷を手に取った。

それを見て、無邪気に笑う未和子さん……もしや、これが新手の仕返しなのでは？

ヒーヒー言いながらそんなふうに思ったのもつかの間、彼女は真面目な顔になり、突然頭を下げる。