早熟夫婦〜本日、極甘社長の妻となりました〜
とりあえず瑠莉が座るテーブル席に戻った私は、適当に頼んだ料理を取り分けている彼女に聞いてみる。


「ねえ、先生となに話してたの？」

「交際ゼロ日婚のカップルが迎える初夜のお話」

「私のことじゃん!?」


勝手になに話してんの！　そんなに楽しそうにニンマリして！

愕然としたあと脱力する私に、瑠莉はキムチチゲを盛った器を差し出して一応謝る。


「ごめん。杏華の名前は出してないのに、私と未和子さんの話を両方聞いたら特定できちゃったっぽい」

「あー、だからか……」


先生のさっきの発言はそういうことね、と納得してうなだれた。

知られても特に問題はないが、ただただ恥ずかしい。

瑠莉は「かんぱーい」と言って、私のグラスに自分のそれをカチンと当て、意味深に口角を上げる。


「でもちょこっと聞いておいたよ、初夜の心得。知っておいて損はないんじゃない？」

「ぜひ教えてください」


食い気味で返す私に、彼女はおかしそうに笑って、さっそくレクチャーを始める。

初夜はその名の通り、初めての経験をするのだから、緊張もするしわからないことだらけだ。なんだかんだ言って、アドバイスはいただきたい。
< 259 / 270 >
表紙・目次

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop