早熟夫婦〜本日、極甘社長の妻となりました〜
私のようなバイトも、社員にも特定の席がない。フロアの中心に大きな長方形のテーブルがいくつか設置されており、そのワークスペースに各々がノートパソコンを持ち寄って、毎日好きな場所に座っている。

担当する案件によってチームメンバーも違うため、スムーズに集まりやすい仕組みとなっているそうだ。

久礼社長も席を移動して、皆と同じテーブルに並んで仕事するときも多い。が、社長は結構面倒くさがりな人で、必要な資料や私物は自分の手の届く範囲に置いておく癖がある。

そのため、社長の物置専用とも言うべきこのデスクが存在する。ひとりで集中したいときなんかにも使っているけれど、ほぼ彼の私物置き場と言っていいだろう。

私はこのデスクから、あるものを見つけ出そうとしている。誰かに見られたら困るので、今しかない。

一応「失礼します」と呟き、デスクの上に積まれた資料やファイルを一冊ずつ退けていく。一分足らずでお目当てのA4サイズの封筒を発見し、私は目を開いた。


「やっぱりここにあった! うわ、封も開けてない」


表と裏を交互に見て、思わず声を上げた。

この封筒は先日社員皆に渡されたもので、以前受けた健康診断の結果が入っている。これはもちろん社長のものだが、見てもいないとは……。
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